名無しの雑記

自分の好きなことについてゆるく書いていくブログです

People in the box の魅力と「Things Discovered」で少し落胆した話。

 

 

 

 

 

 

 people in the boxという3人組の日本のロックバンドがある(以下peopleと略す)。単純にロックバンドといっても、ロキノン系全開のバンドではない。このバンドは少し独特で、曲中に変な拍子が現れたり(また、1つの曲の中で何度か拍子が変わったりすることもある、この二つは『変拍子』と呼ばれる)、矢鱈テンションコードを使ったりする。

 

 サウンド面では、いわゆる王道なロックっぽいものもあれば(といってもそこまでロキノン臭は無い)、かなり実験的で、語りが入っていたり、やたらと壮大な曲調のものがあったりする(後者は大体アルバムの後半に入ってる)。そういうわけで、一応分類としてはロックバンドなのだが、仮に日本のバンドをまとめてその中に位置づけようとすると、少し扱いに困る(といっても、私は日本のロックバンドの歴史を語れるほど詳しくはないので、音楽評論家とかライターが同じことをやったらしかるべき場所に位置づけしてくれるかもしれないが)。

 

 

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 (people in the box)

 

 私は初めてpeople in the boxを聞いたとき衝撃を受けた。今までに聞いてきたバンドとはかなり離れていて、自分の中のロックバンドやスリーピースバンドの概念に大きく影響を与えた。それからは日に何度も同じ曲、アルバムを聴いて過ごした。つまり中毒になっていた。簡単に言うと、ハマっていた。

 

 何もかもが新鮮だった。それまでバンドというのはシングルを何枚か出して、3・4枚出したらシングル曲を含めたアルバムを発表する、ものだと思っていた。このバンドはそうではなかった。今まで出したアルバムに既にシングルで発表された曲は一度も入っていない。つまり新しいアルバムが発表されたとき、全曲新曲で構成されている、ということだ。(そんなバンド他にもいる、という意見もあるだろうが、先行例がいようがいまいが、私はそのときpeopleしか知らなかった。)

 

  

 

 まず曲がいい。捨て曲がない。アルバムもシングルも、一枚のCDが一つの物語みたいで、音楽ではあるけれど絵とか小説とかのような感じがする。

 

これに関してはとにかくCDを一枚買うなり借りるなりしてみてほしい。

最初は(ミニ)アルバムのほうがいい。(ただし、「Weather report」「Things Discovered」はお薦めしない)

 

 また後述するがシングルカットした曲がアルバムに収録されることが無いので基本的にある曲がシングル・アルバムをまたがって収録されることは…...原則的に無い。

                                  ↑ここ大事

 

 

  •  「Sky mouth」「Lovely Taboos」というヘンなシングルとの出会い

......本題に入る前にpeopleが以前にリリースした2枚のシングルについて触れる。

そうしたほうがpeopleがどんなバンドなのかもう少し具体的にわかるし、私が後に書くことが伝わりやすくなるからだ。

 

peopleのシングルに「Sky mouth」というものがある。peopleのメジャーデビュー後の1stシングルで「生物学」「天使の胃袋」「冷血と作法」の三曲入りだ。前述の通りこの3曲は他のどのアルバムにも収録されていない。

 

このCDを買うまで私はシングルというものは「表題曲1曲と➀2・3のカップリング曲②過去曲のremix③過去曲のアコースティックバージョンだかリアレンジだか」で構成されているものだと思っていた(勿論これにも例外はあるだろう。というか絶対ある)。

 

「Sky mouth」はそもそも表題曲は無く、全部新曲だ。2曲目の「天使の胃袋」はMVがあるが、この曲単体を押し出すのではなく、シングルではあるがアルバムのようにCD一枚を通して意味を成すような形態にしてある。

(1つだけ「聖者たち」というシングルではその形は取られていない)

 

「Sky mouth」の構成は「シングル曲→カップリング曲とかなんとか」ではなくて、単純に「1曲目→2曲目→3曲目」となっている。1曲目が、短めだがシングル全体のイントロのような役割、そして2曲目3曲目と続いて終わる、物語的な構成をとっている。

つまり、

表題曲だけ前面かつ全面に押し出して残りはカップリング曲扱い、というのではなく、全部の曲が同等に扱われている。

 

「Lovely Taboos」というこちらも「笛吹き男」「市民」「子供たち」の3曲入りのシングルがある。こっちも1曲だけ押し出す所謂一般的な意味でのシングルではない(そもそもMVのある収録曲が無い)。更にもう一つ大きな特徴がある。

 

  このシングルはCDショップでは買えない。

 

正確に言うと公式サイトで注文するかライブ会場でしか買えない(一応言っておくと、このときpeopleはメジャーレーベルに所属した状態でリリースしている)。 

 

 いわゆる音楽不況と言われている時代にこういう挑戦をしていく姿勢はバンドを運営していくという現実的な問題としても当事者意識を持っていてとても尊敬している。こういうのがあるとまだ希望(というか新しい形態?)があるのだと思えて嬉しかった。

 

こういうことから私はpeopleを音楽的にも、音楽のリリースの形態方法的な面でも新しいことをしているバンドだと思っていた。が、「Things Discovered」では後者の面で裏切られた。 そのことには次で触れる。

 

 

 

 

 

 

 

Lovely Taboos

Lovely Taboos

 

 

  •  「Things Discoverd」というアルバム

 

「Things Discoverd」は今のところ(2017/12/26現在)peopleの最新のアルバムだ。リリースは1年前なのになぜ今更書くのかというと、単純に忘れていたからだ。1ヵ月後に新しいpeopleのアルバムが出ると言うので、それに触発された形だ。

 

このアルバムが発売されて、聴いて間もないときはまだ自分のなかでは整理がつかなかったが、今では断言できる。

 

私はこのアルバムがあまり好きではない。発売する必要がなかったとも思っている。

 

何故か、という話をする前にこのアルバムの内容について説明する。まず、このアルバムは前述の通り「10周年記念アルバム」だ。単に最初のCDから10年経った時期に発売したのではなく、10周年を意識しながら作られたアルバムだ。

 

そういう意味では純粋な意味での新アルバムではなく、内容としてはベストアルバムに近い。

 

収録曲は2枚組でDISC1が1曲新曲、3曲がメンバーがそれぞれプロデュースしたインスト、3曲が過去曲のアレンジ盤の7曲。DISC2が過去曲から選んでマスタリングした12曲、となっている。

 

......中身もほぼベストアルバムだ。しかも私の嫌いな「○○○のベストアルバム発売!! 新曲1曲収録!!」を地でいっている。

 

「新しく入った人のためだ」という意見があるかもしれないが、私としては「なら古くからの人はいいのか?」と言い返したい

 

(商売である以上利益を求めるのはわかるけどあからさま過ぎる。それにたった1曲のために3,4000円近く出さなくてはいけないのは馬鹿すぎじゃないか?)

 

 私は前述したがpeopleのリリースしてきたCDの形態は1枚で完結しているので、わざわざ分割する必要が無いと思っている。また、バンド側もCDを出す度に曲順に頭を悩ませているのだから、DISC2のような、アルバムから1曲抜き取ってCD1枚分埋めるというのは受け入れがたい。

 

新しい人のためにはなにかアルバムを一枚薦めればいい。

 

それだけだ。

 

DISC1についても新曲は好みだったが、他はそうでもない。リアレンジはpeopleがライブでやればいいと思うのでわざわざCDに収録する必要も無いと感じるし(空き地で歌詞を変えたのは波多野さんがポリシーを曲げたような感じがして嫌だった。変えるぐらいなら収録もアレンジも無くていいと思った)3曲のインストもう~んと首を捻った。

 

DISC2のリマスターしたものも要らない。理由も前述した通りで、抱き合わせのような感じがある。

 

 私は初回版を買ったのだが、初回版限定でついてくる文庫本もとってつけたもののように感じた。本には3人に10年を振り返ったインタビューとpeopleの全曲の歌詞がついている。

......正直どちらもいらない。インタビューは10周年を記念した今のpeopleのサイトで簡単に出来そうな内容だし、歌詞集については――これはそもそもの私のタチなのかもしれないが――ピンクフロイドにせよビードルズにせよ、そもそも歌詞集があって役立つ瞬間というのがあるのか?。

 

CDには歌詞カードがついているのにどうして同じものを載せ直す必要があるのか?

(書いてて思ったが、これはベストアルバムと似たようなものではないかと思った)

 

私はこのアルバムはpeopleがCDをリリースするときに貫いてきた「美学、のようなもの」を自ら壊しているように感じて好みではない。

 

散々行ってきたが、勿論、致し方ない部分もある。

 

peopleは今まで所属していた残響をやめて今は日本コロムビアのみとの契約となって、残響ほど自由に行かなくなったのかもしれない。思えば、このCDにしても初回特典の文庫本にしてもpeopleらしくない。

 

かといってレーベルのせいだとも言えない。所属しているからといって傀儡と言うわけではないはずだ。

 

私はこのCDは買わないほうがいいと思うが、peopleのCDは買い続けるつもりだ。

 

初めてpeopleの音楽を聞いたときの驚きをまたpeopleが与えてくれると信じているからだ。

 

 

↓初めて聞く人にはこの2枚がおすすめ。 

Ghost Apple

Ghost Apple

 
 

 

 

Family Record

Family Record

 

 

 

 

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  •  あとがき

 長々と書いたがここまで読んでくれた人にはまず感謝したい。

ありがとうございました。

あとpeople好きの人にはあまり出会わないのでコメントを残していただけると幸いです。長く書いたけど実際には敢えて省略した部分もあります。weather reportのこととか。

 

最後になるが、CDタイトルにも表れているpeopleの美学について触れる。

 

peopleのCDは全てタイトルが英単語2文字。

(うそだと思った方はぜひご参照を、マジです)

数年前、peopleがアニメタイアップを原作者から依頼されて(しかも作者は福岡時代から知っている、という。羨ましい。自主制作版欲しい。)東京グールのEDを努めたときも

 

一応は「聖者たち」というタイトルを冠したものの、CDのパッケージでは頑なに「The Saints」としていたぐらい頑なだった。

 

それほどの強情さがあったのだが、peopleの新しいアルバムは

 

「Kodomo Rengou」

 

という。Children's Unionとかでは駄目だったのか。東京グールの時の抵抗はどこへ行ったのか。

10年も続けてきたら新しいことをやりたくなるのはわからなくも無いが、バンド編成にせよ、CDの形態にせよ、peopleは制約の中で培われてきたものも多いと思う。

正直、不安だ。

しかし、聞いてみなくてはわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

Kodomo Rengou

Kodomo Rengou