people in the box 全音源紹介 その1 「Rabbit Hole」
今回は私の好きなバンドpeople in the box についての記事を書いていこうと思います。
過去私はpeopleについて過去3回記事を書いています。
上の3記事が結構断片的というかすでにpeopleを知ってる人向けの内容となっていたので今度は逆にpeopleを知らない・まだあまり聞いたことがないという人に向けてpeopleの音源を順に追って紹介していこうという結論に至りました。
そうすることでpeopleに最近興味を持った人とかが何を聞くか迷ってる時の指針?になったり、まぁ単純にもっとアクセス数が増えるんじゃないかという期待から書くことにします。
初めにpeopleというバンド自体の紹介を。
People In The Box(ピープルインザボックス)は、日本の男性3人組オルタナティヴ・ロックバンド。2003年に福岡県北九州市にて結成(wikiより)。デビュー当初は残響レコード、後に日本クラウンと契約し、現在では日本クラウンのみと契約しています。「ピープル」という略称で呼ばれることが多いです。
左から山口大吾(Dr)、波多野裕文(Gt&Vo)、福井健太(Ba)です。
2020年現在、ミニアルバム5枚、フルアルバム7枚、シングル5枚、ベストアルバム1枚、ライブDVD4枚をリリースしています
音楽性についていうと変拍子・転調を多用する複雑な曲展開を持ち合わせながらも歌モノとしても成立させている技巧派でありながらもポップミュージックとして成立させているのが特徴です。この2つの相反する要素を共存させる卓越したバランスの良さには脱帽します。
上で書いた「変拍子」という用語ですが、簡単に言えば
「曲中で使われる拍子が4拍子・3拍子以外、または曲中で拍子が変わること(例:Aメロで4拍子→サビで3拍子)」
と考えてください。専門的にはもっと厳密な定義があるかもしれませんがこれぐらいの認識で大丈夫です。
変拍子の使われている例としてはDave BrubeckのTake Fiveという5拍子の曲が超有名です。聞けばすぐに「あぁ…あれね…」ってなります。
話を戻します。
peopleの曲を聴いてると本当にびっくりするんですが、Aメロが4拍子でサビになると3拍子とか結構多いんですね。7とか11とかも出てきます。なのに曲はポップで歌メロも変拍子の歌にありがちなヘンテコなメロディーになってないです。
初期のアルバムではけっこう閉鎖的というか、暗いまでとはいかないんですが明るいとも言えない内省的な雰囲気があります。
中期からは変拍子の要素は薄れていき(とはいいつつまだ出てきますが)、曲調は全体的に穏やかなものとなっていきます。このころからギターで指弾きを導入していきます。メロディーに民族音楽の要素が反映されたりと実験的なこともしていきます。
後期(というか最近)のpeopleはギターをレギュラーチューニングにセットすることが多くなり、指弾き・ピック弾きの併用、ピアノの使用、さらにはピアノ・ギターの併用など新しいことに挑戦し続けています。
ここらへんはおいおい詳しく書いていこうと思います。
今回はpeopleのデビューミニアルバム、「Rabbit Hole」を紹介していきます。
https://music.apple.com/us/album/rabbit-hole-ep/1474575065
peopleは最近全アルバムサブスク解禁したのでもしこれを読んで興味がわいたらSpotifyでもGooglePlayでもなんでも使ってるアプリで探してみてください。
このミニアルバムには6曲収録されています。
1,She hates December
2, Alice
3,ブリキの夜明け
4夜の人々
5,,サイレン
6,鍵盤のない、
1曲目のShe hates DecemberでMVが作られています。
アルバムのおすすめポイント
このアルバムのアピールポイントは、圧倒的な完成度です。
私が初めてこのアルバムを聞いたとき、作りこみの度合いに驚きました。普通、バンドの1枚目って結構粗削りなところとか正直つたないところが見受けられることがあるんですが、このバンドは最初から完成されています。
がっちりと作りこまれたギターフレーズ、土台を支えるドラムベースがいいバランスでかみ合っています。特にドラムのフレーズが優れていて曲中に頻出する変拍子を違和感なくなじませる働きをしています。
冗談抜きで全曲捨て曲がないです。
上にも書きましたが、初期のpeopleは閉鎖的・内省的なポストロック的な雰囲気があるのでそういうのが好きな人にはお勧めです。必ずハマると思います。
The Novembers, syrup16g, sleepy.ab 65daysofstatic(初期)などと似た雰囲気を共有しています。
曲紹介
1,She hates December
People In The Box-She Hates December
1曲目にしてMV曲。確かにこのアルバム内では1番かっこいい曲だと思います。(ちなみにyoutubeに残響レコードが挙げた正式版とどっかの知らん人が挙げた2バージョンがありますが、なぜか残響のほうはフルじゃなく途中で切れてます)
出てくる拍子は4、3、8+8+2の9拍子とバラエティに富んでいます。なのになぜかそんな複雑さを感じさせない。そしてこれはpeopleの全曲に言えることですが、ギターボーカルはかなり複雑なことをしています。コードじゃらじゃらしながら歌う、ではなく、リフもがっつり弾いて弦跳びアルペジオをしながらギターを全然みずに歌っています。一回私も見様見真似でコピーしようとしたらできませんでした。
話を戻します
この曲は結構穏やか目でAメロはクリーンのアルペジオ、サビなどでは少し激しくなりますがギターの歪みもそこまで強くなくいい意味で「邦ロックぽさ」とは違う雰囲気があります。静と動の対比が激しい曲だと思います。
アウトロではイントロのアルペジオを繰り返しながらフェードアウトしていきます。サイレンのように繰り返されて終わるのが幽玄さを醸し出します。
歌詞に関してなんですが、全体的にはっきりとこうだ!!と主張するような歌詞ではないですが出てくるワードが結構不穏です。屋上だとか飛んだ、とか棺とか。
2, Alice
この曲のみこのアルバムで唯一変拍子が使われていないです(変拍子なんか出てこないのが普通ですが)。個人的には1曲目よりもいわゆるロックぽいなぁという印象です。どこで読んだか忘れましたが、メンバーの一人はAliceでMVが作られると思っていたようです。
この曲は結構ギターの音数が少なくて一瞬リフっぽいのやアルペジオもありますが1曲目のShe hates~ほど入り組んでないです。
この曲はサビが気に入ってます。
サビで「まっさかさまさ」という言葉が「飛んで飛んで」並みに繰り返されます。Aliceというタイトルだったり「まっさかさま」という言葉だったりrabbit holeだったりなんとなく不思議の国のアリスを連想させる言葉が並びます。
3,ブリキの夜明け
前の2曲よりもさらに落ち着いた曲です。曲中ほぼずっとG△7(9)-DonA-Bm7というコード進行でほぼ続いていきます。ちなみにこの曲も4+2+4で5拍子が使われています。
やはりこの曲でも静と動の対比が強調されていて、同じコード進行を繰り返しても単調にならないように工夫されています。
私の好きなところはサビ後の「この乗客に人数はない」のところのアルペジオです。かなり美しいフレーズだと思います。
これはほかの曲にも言えますがpeopleのギターは情景・場面を予測できるようなフレーズが多いです。「警笛が~」のところでは実際に警笛のようにフィードバックノイズが入っていたり。
私がタイトルに引っ張られているのかもしれませんが夜明けを連想させるメロディがこの曲で使われています。もっというと夜の風景を凝視してその中で立ち現れる微小な風景の変化だったり観念のようなものが表れてくる瞬間が音になっている気がします。
4,夜の人々
今度はブリキの夜明けよりも数時間前の深夜になり始めたぐらいのイメージです。ちょっと夜遅い時間に外出て人が誰もいない車も全く音も通らない交差点で信号だけが妖しく光っているのを見て俺しかいねぇー最強みたいなイメージです。違うかも
Aメロで3拍子、サビで4拍子が使われています。
最初は低く蛇行するようなメロディーですが、サビでエネルギーが爆発したかのように盛り上がります。歌詞は相変わらず不穏ですが
非常に地味なところですが、よく聞くとアウトロの前でギターと歌がポリリズムっぽいことになってます。よくこれギタボでやれんなと思います。
5,サイレン
このアルバムでは珍しく冒頭でメジャーコードにハーモニクスが使われていて結構明るいです。明るいままで行くのかと思いきやいきなり「みんな生きるのが好き 死んだことないから」とか言ってきます。あれです。曲調明るいけど歌詞くらいってやつです。
でも結局明るい曲調なので明るい歌だと錯覚します。途中途中物騒なんですけどね「彼女は3度目の手紙を書いた 花束に頭を突っ込んだまま」
ちなみに拍子は8+7です。サビ?(”cold breeze”)で4拍子に変わります。
サビでは音が小さくなり歌もつぶやきのようになり、ラスト近くではその内省する雰囲気をぶち破るようなシャウトが鳥肌です。
6,鍵盤のない、
拍子は3、サビで4、一瞬5の三つです。もう変拍子に見慣れてきて3,4,5は普通なんじゃないかと錯覚してきそうです。
このアルバムのラストを飾る曲です。開幕からなんとハーモニクスのアルペジオ(!!)を弾き倒しながら歌ってます。
サビもさることながら初めて聞いた時サビに入る前のコード進行がぐわんぐわんと振り回すような進み方で驚きました。
そして特筆すべきは後半のポエトリーリーディングのパートです。
ポエトリーリーディングとは簡単に言えば語りです。聞けばわかると思いますが、ポエトリーは「歌」というよりは「しゃべっている」という感じです。ポエトリーのあとはコードリフを発展させ激しくなりながら繰り返していきます。
この後半のパートがカッコいいです。激しさもありつつ曲が終わることへの寂しさや愁いを帯びているようなアンビバレンスな感じがあるからです。
ラストにふさわしい曲だと思います。
終わりに
以上、rabbit holeの紹介でした。どうでしたか?
こんな記事を書いたくせして、私は曲の魅力をを文章でどう伝えればいいのかさっぱいわからないので読んだ人に伝わってるか伝わってないんだかもわからないですが、この記事で興味を持って聞いてみてもらえたら幸いです。
それでは