いい本だけどちょっとアメリカ寄りすぎるかもしれないーー『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』レビュー
こんにちは、たけしひでおです。
今回は、SB Creativeから出ている『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』という本について簡単なレビューをしていきます
評価
4/5
かなりいい本ではあるけど、申し分ないほどかといわれるとそうではない。若干内容について偏りがあるため、一部の人にとっては内容が偏っていると感じるかもしれない
この本はどんな人にオススメか
まえがきで一応「大学初級レベル」といっているが、これから経済を学ぶ高校生〜学び直しをしたい(もしくはイチから学びたい)大学生・社会人までを対象になると思います。
経済用語をバンバン使いまくるので、そういうのが苦手な人はあまり向いてないかもしれないですが、教科書的立ち位置で作られてるので、性質上それは避けられないです。そこの点は勉強だと割り切って根気強く読んでいきましょう。
本書の構成
- 全19章+索引 (章によってページ数にばらつきがあり、10〜30ページくらいで1トピックについて語る)
- 約400ページ
- 本の厚さ…2センチ
**割とデカい本なので、本棚を占めるのが嫌だという人は電子書籍(Amazon等あり)で買うのがおすすめです。
内容の難しさ(やや難しい)
内容についてですが、経済の重要トピック(基本的な考え方から事例について)についてかなり細かく説明が載っています。
具体的には、経済学は何なのか、経済はどう動いてんのか、銀行はどう働いてるのか、需要と供給といった経済の基本トピックについてきっちり説明されています。
例えば第1章「なぜ、経済学を学ぶのか」では、「人がある行動を選択するとき・ある行動の選択をやめるとき」を経済学的に分析しています。
私は、この箇所を読んで「経済学ではこういうふうに物事を見ているのか」ということをすこし掴むことができました。
本書では難解になりがちな経済用語の説明を例えを使ってわかりやすくしたり、イラストや図解を使ったりして、読書を置いていかないように配慮されています。
注意点
ただ一つ注意点としては、そもそも経済学の用語は独特なので、説明を読んでもわかりづらいときがあり、全部の内容が一度読んですぐ理解できるようなものではない、と思ったほうがいいです。
そもそも、この本はあまり経済を知らない人向けに書かれているので、どうしても初心者にとっては未知の領域が多く、すぐに理解できないものが出てくるのは避けられません。かくいう私も経済学での「投資」の意味とか、為替らへんの説明は一回読んだだけではよくわかりませんでした。
個人的オススメの読み方
読んでる途中で内容についていけなくなったら、巻末の索引をひくかネット辞書を使って根気強く用語の意味を定着させるやり方がおすすめです。
別に経済について勉強するときに、読んでる本以外の情報を使ってはいけない、なんていうルールは存在しないので積極的に他ソースも使っていけば理解が早まるとおおいます。
若干の問題点(?)
以上ずっと褒めてきましたが、本書のあまり良くないかなと思った点としては、この本の性質上のしょうがないんですが、この本はもともと「アメリカの高校生に向けて書かれた本」なので、細かい経済システムの具体例とか金融政策の説明がほとんどアメリカの銀行とか FRB とかを使って説明されているところです。
(若干穿った見方になりますが、おそらくこの本のアピールポイントには「アメリカの高校生は日本と違ってこんなに早いうちから経済の勉強をしているんだぞ! これでいいのか日本人!? 良くないと思うならこの本を手にとって勉強しようぜ!」みたいな欧米コンプレックスを刺激しつつアメリカという権威性をちらつかせて金融リテラシーを学ばせるみたいな戦略がありそうなので、日本人にとって親しみやすい本を目指しているわけではない感じがします)
実際、アメリカの経済規模はかなりデカいし世界規模ではあるのでアメリカの例を知っておくこと自体は無駄とまでは思わないですが、日本の経済事情とか日本の株式市場についての説明はほぼ皆無と考えたほうがいいです(一応翻訳者ときどき註で「これは日本で言うところの〜です」みたいなことを書いてる)。
なのでそっちの方を知りたい人は、「日本人の著者によって書かれた、日本の事例を使って経済を説明する本」を選んだほうがいいです。
まとめ
以上の点を箇条書きでまとめました。
- 良い点
- かなり盛りだくさんの内容になっていて、経済について詳細に説明されている(およそ400ページ、2センチと結構分厚い)
- 用語については、例えやイラストが入っていてわかりやすくなっている。ただ、それがあっても難しい用語は難しい。根気よく読んでいくしか無い
- あまり良くない点
- そもそも「アメリカの高校生」に向けて書かれた本なので、どうしてもアメリカの話が多い。日本の経済事情とか事例が使われていることは殆ど無いので、日本の事例・具体例とともに経済を学びたい、という人は日本人が書いた経済の本を読んだほうがいい
なので全体としては5段階中4ぐらいの評価にしました。
経済を勉強したいと思ってる人には勧められるかなあと思ったんですがこの一冊で経済が完璧にわかるとか理解出来るみたいになるのはちょっと違うかなという感じがします。特に日本の事情についての説明はほぼ無いので、やっぱりどうしても日本の細かい経済事情についての知識がつかないというのは否めないかな…。
ただ、ちゃんと経済について網羅的に解説されているので、この本の内容をきちんと理解したら経済についてのニュースについての理解度が上がるのは確実です。そこの点はきちんとしている本なので安心してください。