名無しの雑記

自分の好きなことについてゆるく書いていくブログです

「研究者の子育て」という本が面白かった

 

 

先日 「研究者の子育て」という本を読みました。

 

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先日この本を読み始めたとき、非常に面白かったのでツイッターで簡単に感想を呟きました。

 

 

ついさっき読み終わったのですが、短文だけではこの本の魅力を充分に伝えられないな、と思って(ほぼ更新停止ぎみだったブログの更新もかねて)ブログに感想を書いてみようと思いました

 

 

この本は元々紙媒体と電子で発売していたのですが、著者の「研究者、また非研究者の子育て世帯が置かれている現状や社会の問題を、共有したほうが良いのではないか」という考えにより期間限定でkindle unlimited で読めるようになっています

 

(←こちらは関連本の「研究者の結婚」という本です)

詳しい無料化の経緯はこちらです↓

academic-post.nihon-kenkyusya.com

 

 

 

 

この本について

書誌情報

著者:日本の研究者出版

出版社:日本の研究者出版

ページ数:338

 

 

 日本の研究者出版とは?

 

「日本の研究者出版」という名前をはじめて聞いた人は多いと思いますが(私もそうです)ホームページ(https://nihon-kenkyusya.com)を見ると

 

日本の研究者出版とは?
「日本の研究者出版」は博士論文を主に扱っています。その他学術書や一般書も扱いますが、学術書に関しては専門家の査読を通して出版します。論文を出版してもお金にならない、多額のお金を払って博士論文や学術書を出版するといった研究の世界の常識を壊し、研究者が研究に打ち込める環境づくりを目指します。

 

だそうです。

 

要は主に日本の研究者の博論出版を支援するよ、ということですね。

(念のため補足すると、この記事で取り上げている「研究者の子育て」は誰かの博論ではなく、さまざまな研究者の子育て経験が集められたエッセイ集です。)

 

実は、私は去年辺りから研究者のかたを何人かTwitterでフォローして追っているのですが共通して話題に上がるのが「数の少ないポスト」「非正規雇用、任期付きなどの待遇面での不満.不安」でした。

 

そのため私はなんとなく「院進・D進=苦悶の道」というようなイメージがついていました。

 

 

 

この本を読んだあとわかったのは

 

 

「実際、全然楽ではないが、それでもどうにか研究と育児を両立させている研究者がいる。そして日本の育児制度や研究者らが所属しているシステムには問題点がある」

 

 

ということでした。

 

 

長々とかいてきましたが、以下にこの本の感想を書いていきます。

 

感想

※私が読んだのはKindle版なので以下の感想もKindle読んだときの感想になっているのでご了承ください

 

「研究者の子育て」の良い点

①単純に話が面白い

 

12人の研究者のエッセイが収録されてるのですが、それぞれが個性的で面白い。

専門分野はもちろんのこと「4児を育てながら研究者生活を送る女性研究者」や「学生結婚+出産しながら院進」「社会人したあと40代で子を授かり医大の博士課程へ」など見出しだけでもインパクトのあるひとたちばかりです。

 

 

勿論インパクトだけの本ではなく、寄稿者のそれぞれの経験から日本の育児に帯する支援や制度への批判的な考察、親という目線から子供への愛情を語る箇所もあり育児エッセイでもあり社会派のような内容を持っている、という多角的な魅力があります

 

②研究と育児(出産)というあまり聞かない話についての経験談が読める

 

一般的に研究者の生活が語られることがあまりないと思うのでまずその点がユニークです。また、今まさに研究と育児(あるいは結婚?)の両立に悩んでいる人々に何らかの示唆を与えてくれる本だと思います。

 


③(一部の寄稿者は)育児経験と自信の専門分野を関連させて話している人もいる

 

 

国際関係論を専門とする研究者のエッセイがあるのですが、その著者は、育児をする際の妻との関係を「同盟」と捉えて、バードン・シェアリングという用語に当てはめて考えたりしています。

 

・そもそもバードンシェアリングとは…

安全保障研究の分野には、「バードン・シェアリング」という概念がある。国際政治は、国内の政治とは異なり中央政府が存在しないため「無政府状態」であるといわれる。(中略)バードン・シェアリングとはこの統治者がいない状態における同盟国間の役割分担のことであり、適切な負担を分担するための、普段の対話のことである。(171)

 

著者はさらに、この専門用語を以下のように育児に当てはめて考えます。

 このバードン・シェアリングを家事・育児をめぐる夫婦間関係に当てはめて考えると、自分の位置を相対視することができるため、個人的におススメだ。子供を産み育てるということは、夫婦間で責任と役割を明確にし、誤認が生じないよう分担する営為である。失敗すれば同盟破棄(離婚)のリスクすら生じる。私が自分の役割である子供を寝かしつけした後、家事・育児に区切りがついたと認識し、ネットのニュースでも読もうものなら妻(同盟国)から更なる貢献を求められることは必須である。

(172)

 

育児においての妻との役割分担を”同盟国との関係”とみなして考えていて、さすが学者(笑)、といった感じです。

 

こんな感じのエピソードが頻繁に出てきます。

 


4 研究や学者にまつわる用語も出てくるが注釈が充実しているので置いてきぼり感がない

 

読んでみるとわかるんですがページの下側に注釈や一言コメントが挿入される枠があり、エッセイ内で出てきた専門用語や研究職にとっての文化が分かりやすく説明されています。

 

とあるエッセイでは「日本学術振興会特別研究員PD(PRD)」という用語が出てきます。

 

この字面を見て研究者か今現在研究者になろうと目指している人以外は「なんのこっちゃ」となると思います。

 

 

 

ですが、そういう用語にはさきほどいった注釈が入っているので、詳しくない人でも安心して読み進められます

 

「研究者の子育て」のちょっとうーんと思った点

 ページのジャンプがしづらい

 

Kindleでは本を読んでるときに左上にメニューバーみたいなものがあってそこをタップするとその本の章や見出しごとにジャンプできるようになっています。

 

しかし、研究者の子育てでは、「page 1」や「page2」という風にすべてのページににリンクしており(そのため実際はリンクとしての昨日を果たしていません)

 

↓参考画像

 

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そのため、例えば「5人目の研究者のエッセイが読みたい!」となってもリンク先からすぐには飛べず、①目次からページ数を確認し、②シークバーで「ここら辺かな?」と推測しないと見たいページに行けません。

 

私のキンドルに入ってる別の書籍(漫画)ではこうなっています。

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「Chapter One」「Chapter Two」というふうにジャンプが設定されています。

 

というかこういうふうに章とかチャプターの区切りなどにジャンプマークがあるのが普通です。

 

些細な問題ではありますがめんどくさいっちゃめんどくさいです。

 

 

でも不満を覚えたのはそこくらいです。

 

おすすめの読み方

 最後に、内容についてというよりは個人的なおすすめの読み方について

 

「研究者の~」300ページ越えのかなりボリュームのある本なので一気に読もうとすると結構疲れます。「大分読んだな~」と思ってシークバーで進捗状況みると全然進んでなかったりします。

 

それだけ濃厚な内容だということですが、「ガッツリ構えて読書するのはニガテ」という人もいるかと思います。

 

そういう人は「頭からケツまで律儀に読む」のではなく「目次を見て『お、面白そうだな』」と思ったところをつまみ食いするような読み方がいいです。この本は別に教科書とかではないんで読む順番なんてあってないようなもんです。

 

長ぇ!飽きた! となって投げ出してしまうのはもったいないので興味のあるところから掲載順は無視して読むのがオススメです

 

 

hideotakeshi2.hatenablog.com

 (以前書いたこの記事で取り上げた読書方を参考にしています)